二宮町 Y様邸新築工事


「構造塾」家づくり応援・業者マップからお問合せいただきました。

 

茨城県から終の棲家としての住み替えで、土地を購入しての計画。

お施主様の拘りで私にとって初めての試みの設計でした。

 


設計概要

所 在 :中郡二宮町

敷地面積:267.00㎡

延床面積:102.88㎡

1 階 : 56.51㎡

2 階 : 46.37㎡

 

構 造 :木造在来工法

用途地域:第一種低層住居専用地域/第一種住居地域

その他 :22条区域/準防火地域


お客様のご要望

終の棲家として、大屋根の外観デザイン(屋根勾配10寸)、1階から屋根までの大黒柱、古材梁の活用、外壁塗り壁、自然素材のクロス、無垢床材などの他、耐震等級3、断熱等級6とたくさんのご要望をお持ちいただきました。

 


ご提案

 

敷地を見て、斜面地の上で見晴らしも良く、日射取得は抜群!大開口のLDとしたい。

 

意匠、省エネ的に建物の向き、大屋根をどちらに向けるか?

大屋根の向きを東西にすると、日射取得は2階もとりやすいが、部屋の配置や吹抜、大黒柱などを考えるとメリットが少ない

南北に屋根を掛けると、2階南側日射取得が取りにくいが大黒柱を吹き抜けを介して眺めることができる。

その吹抜には使用したいという古材梁を設置する計画としました。

 

ダイナミックは大黒柱と古材梁のある吹抜

ご要望の何を最優先とするのか?というところを考えに考え、

印象的な空間となるLDとなりました。

 

吹抜に設置する古材梁の再利用については初めてでした。

私たちの住む神奈川エリアにもいくつか古民家は残っている場所もありますが、

古材を活用する場合、どこに行けばよいのか?まったくツテが無い状態でした。

 

しかし、私もお世話になっている構造塾会員の中に古民家に携わる設計士の方がいらっしゃって、

勉強会などで何度かお会いしていたので相談してみました。

すると、千葉県君津市の㈱真輝建備さんが古材倉庫という古材を扱う事業も行っていることを教えていただきました。

早速コンタクトを取り、見学と相談をさせて頂き、Y様にご案内することを決めました。

 

梁をかけるスパンよりも長めの梁を2本選んでいただき、無事吹き抜けに設置しました。

 

古材に関しては構造的には除外し、あくまで化粧梁として設置しました。

提携のプレカット工場に持ち込み、仕口加工をして、強度検査をしてと

コストを掛ければ構造的な検討もできたのですが、

しっかりと構造区画・構造計画を行ったうえで、吹き抜けには構造材が配置されないように構造設計を行いましたので、

吹抜に印象的な古材梁を設置することができました。

 

ダイナミックな大黒柱についても、プレカット業者では無垢の大黒柱の入手は難しいと言われてしまいました。

丸太の大黒柱なんて、どこで入手すればよいのか?

と様々な連絡先を見返してみると、釘を1本も使わない伝統工法を施工を行う大工さんを思い出しました。

早速相談してみると、大工さんのご紹介だからと相談に乗っていただき、

 

大黒柱は土台から小屋梁まで到達するものがご要望でしたので、

長さは7m以上が必須、参考にいただいた写真から推定して、太さは300φ程度

 

7mは山から切り出す際に長すぎてカットされてしまうことが多いようでしたが、

数は多くないが無いことはないということで、探していただきました。

 

杉磨き丸太を静岡天竜産7.5m φ210~260と京都北山産7m φ300がありましたので、

長さはどちらも問題ないので太いφ300のものを採用できました。

 

どちらも私だけではどうにもならなかった内容ですので本当に助けられました。

 


採用した京都北山の磨き丸太 φ300

これだけでも長くて太いのがわかります。

 

構造的には基礎に載せ、上部を小屋組みに固定し構造的には影響がないように

設計しました。


直径30㎝、長さ7mの大黒柱の上棟シーンです。クレーンの入らない場所での搬入、柱建てに苦労しましたら無事に上棟ができました。1階部分の一部の動画ですがご覧ください。


古材倉庫で古材梁を選定しました。

 

希望の長さ、太さから吹抜で見せるためにとお伝えし、

曲がり方などの特徴のある梁をいくつも出していただき、

好みを確認し、選定させていただきました。

 

解体する古民家の建具や梁以外の古材なども沢山あり、

再利用できるのであればとても魅力的な場所でした。

 

建具はH1800のものがほとんどでしたので、今の建具高さよりは低いですが

敢えて採用というのも有りかと思いました。

吹抜を見上げると見える印象的な古材梁

 

曲がり部分を活用し、設置していただきました。

外張断熱をさいようしておりますので、古材梁は構造の梁の上に載せて固定しています。